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弁護士業務における日本語入力の効率化

今回は、弊社代表橋本訓幸による、日本語入力の効率化についてのコラムをお届けします。

弁護士にとって日本語入力の効率は仕事の効率を左右する

弁護士の業務はアナログ的なものからデジタル的なものまで多岐にわたりますが、
「パソコンを使った文章作成」にはかなりの時間を要しているのではないかと思います。
このように多くの時間を費やしているものについては、その効率の良し悪しが
全体としての弁護士業務の効率化に大きな影響を生むことにつながってきます。

そこで、何とか日本語を効率よく入力することはできないだろうかと
個人的に色々試行錯誤をしてきましたので、その経過をここに記載したいと思います。

日本語入力方式はローマ字入力だけではない

色々と試したことの中には、純粋なタイピング技術の向上
(タッチタイピングをより完全なものにするなど)というものもあったのですが、
それ以上に影響が大きいものとしては、
日本語入力をどのような方式で行うか
ということがあります。

ここでいう「日本語入力方式」とは、いわゆる「ローマ字入力」とか、
「かな入力」とかというものです。
これについては、なんとなくローマ字入力を使っているという方が
多いのではないかと想像しています。

最初にPCに接するときに、
ローマ字入力の人が多数派、
日本語も英語も入力しやすい、
といった情報を見たりしてローマ字入力を選択していないでしょうか。
そしてその後、特に「ローマ字入力という選択が正しかったのか」という
検証などされてこなかったということはないでしょうか。

私はそうでした。

もっとも、弁護士となって、業務として日々多くの文字をキーボードで入力するうちに、
「もっと楽な方法はないものか」
という安直な願望を持つに至り、長年使ってきたローマ字入力に対して
疑念を持つようになりました。

そこで改めて検討してみたところ、
日本語入力方式としてのローマ字入力は、
少なくとも入力効率として優れたものでもなさそうだという感想を持ちました。

たとえば、ローマ字入力で
「ひらがな」を入力しようとした場合、
母音を除けば2回以上キーを押さなければなりません。

これに対し、例えばかな入力であれば、
ひらがなを入力する際には、キーを一回押せば済むのです。

このようなに、同じ文章を入力する場合でも、
入力方式によってキーを押す回数に違いが出てきます。

ただし、
かな入力にしさえすればいいかというと必ずしもそうでもないと思いました。
かな入力では、確かにキーを押す回数は少なくすることができるものの、
その反面、押す対象のキーが広範囲にわたってしまうという問題があります。
お手元のキーボードが日本語入力キーボードの場合、見ていただくとわかりますが、
数字キーのある列にもひらがなの刻印がされています。
ローマ字入力の場合は、縦3列分のキーしか使わないのに対して、
かな入力では縦4列分を使用するということになります。

このように使用するキーが多いと、
最初に覚えづらいという問題もあるのですが、
入力する際の指の移動範囲が広いという、継続的な問題もあることになります。

いいとこどりの方式?(親指シフト、中指シフト)

文字入力時のキーの打鍵回数は極力少なくしたい。
しかし指の移動範囲を広げたくない。

この2つの相反する要請を両立する入力方式として、
特定のキーを入力文字の切り替えのための
「シフトキー」として用いる方式があります。

たとえば、普通にキーを押したときに入力される文字と、
特定の「キー」(これをシフトキーと呼びます。
ちなみにキーボード上の「SHIFT」キーのことではありません。)
を押しながらそのキーを押したときに入力される文字とを
別にするという方式です。

このようにシフトキーを使った入力方式のうち、
比較的メジャーなのは、親指シフト(NICOLA)という方式です。
親指の位置に切替えのための特殊なキーを配置した専用のキーボードを用いて、
その特殊なキー(親指シフトキー)と他のキーと同時に打鍵することで、
入力する文字の入れ替えを実現するという入力方式です。
少し前にビジネス書をたくさん書いていた勝間和代という方も
この方式を使っていると本に書いていました。

この方式も試してみたのですが、結論としては自分には合わないと
感じました。
問題と感じた点としては、専用のキーボードを使わないと
なかなかその真の実力を発揮しづらいということです。

そこで、キーボードを選ばない
「中指シフト」という方式を選択することにしました。
中指シフトの系列でも細かく枝分かれしており様々な方式があるのですが、
最終的に落ち着いたのは、「下駄配列」というものです。

下駄配列自体の細かい説明は割愛しますが、これにより、一文字一打鍵で、
かつ、指の移動も必要以上に大きくなく、
かつ、どのキーボードを使っても使用感に大きな変化のない環境を
実現することができました。

「下駄配列」導入の実際

実際にはどのようにして下駄配列を実現しているかというと、
各環境でキーリマップと言われるソフトを入れて、キー配列を変更します。
(Macでは「Karabiner-Elements」というフリーソフト、Windowsでは
「やまぶき」というフリーソフトを利用しています。)

これらのソフトで下駄配列の環境を導入すると、
キーの表面に刻印されている文字は全く意味をなさなくなります。
キーを見ても何が入力されるかはわからなくなるので、
慣れないうちはキー配列の表をどこかに置いておいて、
実際に入力しながら体で覚えていくことになります。

このキーの位置を覚える事自体はそれほど困難なことではなく、
3日もあれば位置はだいたい覚えることができてしまいます。
あとはいかにスムースに入力ができるようになるかということ
なのですが、これは自分の場合ある程度時間がかかったような気がします。

今や当時の苦労はあまり記憶していませんが、過去の記録を見返すと、
ローマ字入力と同程度の入力速度になるまで
1か月弱くらいかかっているようです。

ちなみに今でもローマ字入力については
使おうと思えばさほどの問題なく使うことができます。
したがって、必要なときにはローマ字入力に戻すことも可能は可能です。

今まで使っていた入力方式以外のものを身につけるというのは、
たしかにそれなりの時間を要します。
それでも、一度身につけさえすればその後ずっと
効率よく入力をすることができるのですから、
やるだけの価値はあるように思います。

効果としては、導入前後の客観的な比較は難しいのですが、
下駄配列導入後の数値としてはe-typingというタイピング練習サイトのスコアで
402、Professorというのが残っていました。
意識としては比較的ゆっくりと指を動かしても、
文字入力はそれなりのスピードで行えるという感覚があります。

主観的なものとしては、かつては長文の起案をする場合には、
検討段階だけでなく、実際に文字を入力しているときにも
時間がかかっていた印象があります。
下駄配列にしてからは、入力時の負担が減った感覚があり、
起案に対する精神的負担も軽減されたような気がします。
このあたりはあくまでも感覚的なものなのでなんともいえないのですが、
入力効率を考えると、起案時間の減少にはつながっているのではないかと思います。

音声入力について

最近ではスマートフォンやMacで
音声認識による文字入力が可能となっています。
こちらも精度がかなり高くなっており、漢字変換まで行われますので、
それなりの入力効率で行うことができます。

かつて70枚以上のページ数にわたる起案を短時間で行わなければならない
という状況になった際には、音声入力を中心に起案を行い、大変助かりました。
後から多少の修正を行わなければならないということはあるにしても、
手や腕に対する負担が少なく、比較的高速に入力を行うことができるので、
こちらも一つの選択肢としてはありかと思います。

もっとも、声を出さないといけないという性質上、在宅で行えるときなど
使用環境が限られるというのがたまにキズです。
その意味では、音声入力だけに絞るということは通常困難と思われますので、
依然としてキーボードによる日本語入力について効率的な入力方法を
検討することには意味があるものと思います。

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